USMLE STEP2 CSに学ぶ医療面接攻略

医学
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週明けにCBTの結果が返されると聞いて、常に心尖拍動が聴取されてしまいます。ジョンです。

医学部ではCBTと並んで臨床実習への参加を阻むテストがあるのです。その名もOSCE.

共用試験は、知識を評価する試験(Computer Based Testing: CBT)と、臨床技能と態度を評価する客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Exam ination: OSCE)の2つからなり、いずれもそれまでの学習の総括的試験である。

— 診療参加型臨床実習に参加する学生に必要とされる技能と態度に関する学修・評価項目(第4.1版) 「はじめに」より抜粋

CBTに関しては対策方法、体験記も手厚いのですが、OSCEはそれと比較して少ない。そのため、どうしてもそれぞれの大学で各々我流の対策をして、下手したら不合格に‥というパターンもあるのではないでしょうか。

今回は、そんな状況を回避するために、OSCEが参考にしている「USMLE STEP2 CS」のテキストを元に、「どうやったら医療面接で上手く話せるのか」ということについてお話していこうと思います。それでは、やっていきましょう!

この記事を書いた人
じょん

2024年に医学部を卒業、現在大学病院と300床程度の市中病院のたすきがけ研修を行う傍ら、研修生活をより楽しく、パワフルに送る方法を発信しています。
自分自身の体験に基づいた信頼性の高い情報を発信し、研修医・医学生に役立つコンテンツをお届けしています。

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医療面接を分析- 敵は誰か?

医療面接の相手は「SP」さん?

実はこの世には、SP、という人がいるのよね。Simulated patients、もしくはStandardized patients

名城大学SP研究会によると、SPとは「医療者の教育の為に一定の訓練を受けて、実際の患者と同じ様な症状、会話を再現できる患者役を演じる人」との記載があります。

また東京SP研究会のHPによると、「東京SP研究会では1995年の厚生労働省による試行からOSCEのお手伝いをしており、2000年は首都圏を中心に17大学でお手伝いをしております」そうです。これからも、自分の大学で実施されるOSCE、特に医療面接に於いては、SPが起用される可能性が高い、と考えられるのではないでしょうか。敵(医療面接の相手)は、SP。

SPさんとの医療面接で意識すること、それは『アドリブを減らす』こと

さて、ここからは、「SPさんに対して医療面接を行う際に注意すること」ということで話を進めていこうと思います。
「SPさんに対して」ということなので、「学生のお手伝い」など、SPさん以外の人間、つまりその症例に対してStandarized されていない人の可能性は一旦無視して考えます。

私達に与えられた制限時間を‥そうですね、仮に30分、として考えましょう。
そうなれば、30分という制限時間の間にSPから必要な項目を聞き出すのが医療面接の目的、と言えるでしょう。そして、この30分の間に聞き漏らしがあれば減点、となるのだと予測されます。(OSCEの評価方法に関しては全く開示されていません。減点法ではなく加点方式、はたまた全く違う点数の付け方をしている可能性もあります。)

さて、その場合、合格に足る点数を取るためには、どうすればよいのでしょうか。
SPは上で触れた様に、「一定の訓練を受けて」医療面接に参加しています。
そして医療面接にはシナリオがあり、SPはまるで俳優の様に、その役を「演じる」のです。

ここで、医療面接で不合格にならない、つまり「制限時間内に、指定された内容について質問する」為に必要な要素について述べます。それは、

SPにアドリブをさせないこと

これだけ見たら簡単そう‥と思いませんか?私もそう思います。言葉だけ見たら。

まず一般論として、アドリブは通常の会話よりも「難しい」と認識されます。
例えば人前で発表する時、突然振られた質問に対して流れるように答える。これは「アドリブを利かす」行為であると言えるでしょう。
予め用意していった台本を読み上げることは出来るけど、当日生じたトラブルが原因で、発表がぐちゃぐちゃになってしまった‥という経験がある人は多いのではないでしょうか。

今回はアドリブを利かせることと「時間」ということに注目します。

アドリブを利かして質問に回答するときと、事前に知っていた質問に対して回答する時では、それにかかる時間が変わる。

前者の方が、「何を答えようか」と考える分、SPが回答するまでに時間を要するでしょう。
これを繰り返していれば、必要なことを聞ききる前に、タイムアップとなってしまうことが容易に想像されます。

加点法にしろ減点法にしろ、「聞かなくてはならないことが聞き出しきれない」場合は、合格から遠ざかってしまうでしょう。

 

つまり、OSCEの医療面接で点数を取る方法とは、「SPが予習してきているであろう範囲で質問し、できるだけアドリブで回答させない」ことだと考えられます。理論的にはね。

SPにアドリブを利かせない方法は?

ではどのような質問が、アドリブを利かせる必要もなく、SPが事前に学習してきている質問なのでしょうか。
それは、分かりません。そもそもそれが分かっていることは、医療面接は愚か日常会話でも少ないのですから。

しかし、策はあります。例えば臨床推論。CBT 4連問とかも「限られた情報から鑑別疾患を上げ、診断をつける」という、プチ臨床推論、ですね。

例えばSPの主訴が「胸痛」ならば「痛みの持続時間」「増悪寛解因子」「具体的な場所」「付随症状」などは、鑑別診断を立て、診断していく際に必要だと考えられるでしょう。

また「腰が痛い」ならば「痛くなった要因は?」「増悪寛解因子」「痛みの程度」「具体的な場所」などが質問項目として挙がってくるでしょう。これは、OSCE対策というより、一般的な因果関係に注目した質問です。

「腰が痛い」(果) →「その原因は?」「具体的状況」(因)

 

これを、事前に考えておくのです。そして、「まぁ胸痛ときたらそれ聞くよね」という様に、自分の中での常識、にしておくと良いのでは無いかと感じます。

個人的な話をすると、「痛み」が主訴の場合の鑑別は非常に立てやすいと感じます。

OPCDSFLIQRAA や Let’s QQ FAST など、痛みを主訴とした時の語呂合わせ、みたいなものはたくさんあるからでしょうか。

しかし、「息切れがする」等痛み以外の主訴がテーマの医療面接では、そうはいきません。鑑別とそれに対する質問を考えれていない、というのが現状です。
(ここは症候学を学べば解決できるのだろうな、と考えています)

患者の主訴から考えられる鑑別疾患と、それに対する質問を考えておこう

主訴に関係ない質問=嗜好歴、アレルギー歴、家族歴も大事

さて医療面接には、主訴に関係する情報以外に、「絶対に聞かなくてはならないであろう要素」がいくつか存在すると考えます。

アメリカの医師国家試験に該当するUSMLE ,そのSTEP2 CSでは、医療面接と身体診察が実施されます。OSCEの質問項目に関してはよくわからないのですが、USMLE STEP2 CSの中で主訴とその関連事項について聞いた後、必ずと言っていいほど毎回されている質問が「嗜好歴」「アレルギー歴」「家族歴」です。

「どうしてOSCEなのにUSMLE STEP2 CSを?」と思う方もいらっしゃるかもしれないので、ここで少し補足させてください。

USMLEコンサルタントとして活動されている瀬崎先生 が医学界新聞に投稿した「Dr. セザキングのUSMLE セミナー」には以下の様に記されています。

日本で言うと,STEP1はCBT2 CKは医師国家試験のような内容と考えていただければイメージしやすいでしょう。STEP2 CSはOSCEのモデルとも言われる試験ですが,OSCEと比較しはるかに難易度が高く,また英語力も問われるため,われわれ日本人は特別な対策をして臨む必要があります。

Dr. セザキングのUSMLE セミナー, [第1回] STEP1・2 CK―いかに素早くMCQを解き進めるか?(前編), 医学界新聞 より

ここからOSCEでも、STEP2 CS同様嗜好歴やアレルギー歴、家族歴に関する質問をする必要があると考えられます。

ここからはそれらの項目の対策を考えていく。
まずそれぞれ、「どの様な目的で聞くのか」を重視してほしい。

まずは嗜好歴

「息苦しさ」を訴えている患者に対して喫煙歴を聞くことはCOPD等の疾患を鑑別する際に重要だし、「上腹部痛」や「腹部腫瘤」を訴える患者に飲酒歴を聞くことは、アルコール性肝障害などの鑑別をする際に重要となる。
また一見関係なさそうな主訴で来院している患者に対しても、USMLE STEP2 CSで紹介される症例では全例嗜好歴が問われている。
ここからは、OSCEでも同様に対策するのが良いのでは無いかと考えられる。

次にアレルギー歴。

STEP2 CSでは「ペニシリンやNSAIDSを服用した後に皮疹が出た」という形で登場することが多い「アレルギー歴」。

例えばアルコールでかぶれたことがあるという項目が聞ければ、検査や治療の際に非常に役に立ちます(ワクチン接種会場で「アルコールでかぶれたことはありませんか」、と聞かれるのは、正にそれを聞くためのもの)

最後に、家族歴。

CBT対策をしているだけでも、遺伝性疾患を疑わせる問題では「祖父は突然死している」「両親が高脂血症を指摘されている」などと、それらしい記載が並ぶことを知っているはずだ。

これは医療面接に於いても同様に考えられる。「息切れ」が主訴の患者から「父が突然死した」という情報が得られれば拡張型心筋症を鑑別に上げるし、「父、父型の叔父でも同じ様な症状が見られた」となれば伴性劣性遺伝の疾患を考えるキッカケになる。
これが、STEP2 CSで家族歴が聴取される理由の一つだろうし、同時にOSCEでもこの項目を質問することは重要だと考える。

「主訴に応じた質問」+ 「患者に関係なくする質問」→その他は?

ここまで、「患者の主訴に対して予めどの様な問診をするのか決めておく」「嗜好歴、アレルギー歴、家族歴を聞く」ということについて触れてきた。

恐らくOSCEを対策する時に大学からみっちり対策授業がなされることだと思うので、それ以外の枝葉末節に関してはそこで調整して欲しい。

あくまでも今回は「東京SP研修会でOSCEの援助するって書いてあるし、ウチの大学でもSPが登場するんじゃね」「STEP2 CSを元にしてるんだったら、そこで聞かれている内容はOSCEでも重要なんじゃね」という視点で作成している。

医療面接はノリで行けそうな気がしてしまうが、ノリで行くことで「漏れ」が出来たり、SPをアドリブで考えさせ過ぎて「時間切れ」になることが容易に想像される。

しっかり対策して、臨床実習への一歩を踏み出してほしい。

ちなみに私は丁度今日OSCEが終了した。
COIは無いが、うん、難しかった(ここで息絶えている)

 

今後OSCEを受験される方の対策の一助となれば幸いです。

CBT対策の他、AnkiやObsidian 等、デジタルノートテイキングに関してこのブログでまとめて行く予定です。
「Ankiの〇〇はどうなんじゃい」などあれば、TwitterのDM、質問箱等で送って来ていただければ、死ぬ気で対応します。

ではまた合う日まで!!

 

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