日本史や世界史、皆さんはどうやって勉強していますか?
山○や東○ブックスの一問一答を赤シートで隠しながら勉強した人、先生が楽しく話してくれるストーリーに基づいて勉強した人、様々でしょう‥‥。
大学受験の歴史の勉強を「ストーリー展開で覚える人」ほど、丸暗記を嫌う傾向がある気がしています。
というか、過去の自分が「ストーリー展開で歴史を覚え、丸暗記を嫌悪している人間」だったからそう思うだけなのかもしれません^^;
「丸暗記」と「ストーリー展開で覚える」は、両方とも覚える程度の差はあれ結局は覚えているのに違いないよね、と最近思うようになりました。
それは私が今メインで学習している「医学」という分野でもその事が言えると思い、このエントリーを作成しました。
今日の記事を読めば「丸暗記、ストーリー記憶、どっちが良いの?」という疑問が無くなると思います!それでは始めていきましょう📚📚
学習には「暗記」が付き物
医学の勉強に於いてもストーリーを用いた暗記は重要です。
歴史における「ストーリー」は医学では「病態」と呼ばれることが多いですが、それで覚える人と、単純な記憶で乗り切る人に二分されます。
‥と言いましたが、程度の差はあれみんな、両方の方法を利用しているので、「ストーリー(病態)を意識して勉強する割合が高い人・低い人」という言い方の方が適切なのだと思います。
今日の話は「ストーリーじかけの学習と丸暗記の学習はどの点で違うのか」という話でしたね。
丸暗記 vs ストーリー暗記 – 肥厚性幽門狭窄症を例に –
例えば最近勉強したのが小児の「肥厚性幽門狭窄症」という病気。
この疾患は、出生2-3週間ほど経った頃より、食後の噴水様嘔吐、が見られる疾患です。
※ 「これが肥厚性幽門狭窄症だ」、というより、「生後2-3週程経った後に見られる嘔吐で、食後に見られることが多く、X線や超音波検査でも特徴的な画像所見が見られるものを肥厚性幽門狭窄症として治療介入を開始する」という言い方の方が適切かもしれないが、そこは多めに見て下さい( ;∀;)
さて、この肥厚性幽門狭窄症では血液ガス分析で代謝性アルカローシス、電解質異常として低カリウム・低クロールが見られる事が知られています。
これをどういうレベルで覚えるか、という話をしましょう😪
覚え方1: 丸暗記
「肥厚性幽門狭窄症では血液ガス分析で{{c1::代謝性アルカローシス}}が見られる」
「肥厚性幽門狭窄症では電解質異常として{{c1::低}}カリウムが見られる」
「肥厚性幽門狭窄症では電解質異常として{{c1::低}}クロールが見られる」
覚え方2: ストーリーを意識した暗記
「肥厚性幽門狭窄症では哺乳後の頻回嘔吐を見る」
「嘔吐に伴い、胃酸が低下する」
「胃酸が低下すると血中のH+が低下し、アルカローシスを見る」
「血中H+が低下するとカリウム・クロールが低下する」
この2つの覚え方は、結果として「肥厚性幽門狭窄症では血液ガス分析で代謝性アルカローシス、電解質異常として低カリウム・低クロールが見られる事が知られている。」という内容を覚えることに成功しています。
ストーリーを意識した暗記と丸暗記のはどの点で違うのか – 知識の発展性 ー
ストーリーじかけの学習と丸暗記の学習はどの点で違うのでしょうか。
現段階でそれは「発展性の違い」だと感じています。
例を元に、このことについて詳しく見ていきましょう📚
覚え方1の場合、覚えた知識は「肥厚性幽門狭窄症」以外の文脈では使い物になりません。
「通常の嘔吐ならばどうか?」など、それ以外の場所では使えない知識となってしまいます。
一方覚え方2の場合、
「嘔吐や胃酸吸入など、血中のH+が低下するよぅな疾患ではカリウムが低下する」
「他にも血中H+ が低下する状況、つまり呼吸性アシドーシスでもカリウムは低下するよね」
など、今回覚えた内容を利用して肥厚性幽門狭窄症”以外の文脈”にも知識を応用させる事が出来ます。
※ 利用する、とは具体的に「主語を言い換える」とイメージすればわかりやすいかも。
勿論覚え方2の「肥厚性幽門狭窄症では哺乳後の頻回嘔吐を見る」は肥厚性幽門狭窄症の文脈の中でしか使用することはできません。
しかし、3つすべてが肥厚性幽門狭窄症でしか使用できない覚え方1よりは、知識の発展性が高いとは思いませんか?笑
ストーリー暗記も丸暗記も「覚える」ことには変わりはない
「丸暗記」と「ストーリー展開で覚える」は両方とも覚える程度の差はあれ結局は覚えているのに違いない
の言葉通り、実は覚え方2、でもある程度は「覚える」の工程を伴っています。
例えば
「肥厚性幽門狭窄症って哺乳後にどんな症状が見られるんだっけ?」という事を覚えていなければ、このストーリーは使えません。
「嘔吐すると、胃酸の量ってどうなるんだっけ?」を覚えていなければ、このストーリーは使えません。
※胃液を吐いたら胃液がなくなる、と言うのは「覚える」ですら無いような気がします。今有るものは使えば無くなる。自然の摂理、常識‥‥、いや、それは言い過ぎか😪
でも、それを認識している人は全体の中でも少数派、でしょう。
おそらく「自分の中の常識・当たり前」になってしまっているから。
「赤信号は渡ってはいけない」という事実を「暗記している」と認識している人は少ないですよね。
そこに対して「いやいや、ストーリーが大事って言ってる人も一部”覚え”てるじゃん」とケチを付けるのがこの文章なんです。
丸暗記とストーリー記憶の違い。それは「そこに発展性はありますか」ということ。
ストーリー記憶も一部「丸暗記」なんです。
例えば
「肥厚性幽門狭窄症では哺乳後の頻回嘔吐を見る」という丸暗記事項は更に、
「肥厚性幽門狭窄症では幽門部の平滑筋が肥厚している」
「消化管が閉塞/狭窄すると、腸管内容物が停滞する」
「停滞した腸管内容物は機械受容器(伸展受容器)を刺激し、嘔吐中枢を刺激する」
「嘔吐中枢を刺激されると、嘔吐する」
という4つの知識にすることが可能になります。この様に更に細かくすることを「知識の分解」と個人的に命名しています。
この中の2つ目と4つ目、
「消化管が閉塞/狭窄すると、腸管内容物が停滞する」「嘔吐中枢を刺激されると、嘔吐する」
は、
「いやいや、口から入って出口がなければ、溜まるでしょ」「嘔吐中枢、って嘔吐するかを決める場所って定義なんだからそりゃ吐くでしょ」
という常識・当たり前、になる人が多いと思います。
このレベルまで知識を分解すると、
「肥厚性幽門狭窄症では哺乳後の頻回嘔吐を見る」
「嘔吐中枢を刺激されると、嘔吐する」
の2つが丸暗記レベル。
それ以外の2つ
「消化管が閉塞/狭窄すると、腸管内容物が停滞する」
「嘔吐中枢を刺激されると、嘔吐する」
が大多数の常識レベル、になりました。
この「知識の分解」を、永遠に繰り返します。
やったことが有る人ならお分かりかもしれませんが、おそらく10回もしない内に「いや、そこは覚えるしか無いよね」という段階になるだろうな、と思います。
ストーリー暗記のデメリット①: 時間がかかる
結果的にストーリーで理解しようとすると、
「肥厚性幽門狭窄症では血液ガス分析で代謝性アルカローシス、電解質異常として低カリウム・低クロールが見られる」という内容を覚えるために、
「肥厚性幽門狭窄症では幽門部の平滑筋が肥厚している」
「消化管が閉塞/狭窄すると、腸管内容物が停滞する」
「停滞した腸管内容物は機械受容器(伸展受容器)を刺激し、嘔吐中枢を刺激する」
「嘔吐中枢を刺激されると、嘔吐する」
「嘔吐に伴い、胃酸が低下する」
「胃酸が低下すると血中のH+が低下し、アルカローシスを見る」
「血中H+が低下するとカリウム・クロールが低下する」
の「8つ」の文章を覚えることになってしまいました。
最初、「覚え方1: 丸暗記」でいくつの文章を覚えたか、覚えていますか?
3つです。
3つの文章を覚えたら済む「覚え方1: 丸暗記」と、8つの文章を覚える「覚え方2: ストーリーを意識した暗記」
この数字だけを見ると「丸暗記の方が覚える数が少ないじゃないか」と怒る人も多いかもしれません。
しかし、ストーリーで理解した場合の覚えた知識の「発展性」は計り知れません。
これが、海老で鯛を釣る、一攫千金、濡れ手に粟、な学習です。
またストーリーで理解する時は、「覚える数が増える」だけでは済みません。
おそらくこれだけのことを「ストーリー」に仕立て上げるためには、時間もかかります。
肥厚性幽門狭窄症ではどうして嘔吐が起こるんだろうか?
消化管が閉塞すると、どうして嘔吐が起こるのだろうか?
などと疑問を抱き、それを調べる。正しいという確証を得るまで。
ここまでには多大なる時間を要すると思います。
時間がかかる。
これが「ストーリーを意識した暗記」のデメリットです。
※時間がかかる事はデメリットになるのか?などと問いかける事は非常に面白い行為であるが、一旦現段階ではその前提で話を進めていきます。
医学知識は3.5年で2倍になると言われています2。
1つ1つの知識を独立した状態、発展性のない状態で覚えていこうとすると、些末な知識に気を取られて「重要な事」が覚えられなくなってしまう。
そんな状況を防ぐ救世主。それが「知識の発展性」ではないかと思うのです。
結果として知識の発展性を求める学習は時間がかかります。
それを「時間の無駄」と捉えるか「将来への投資」と捉えるかの判断は、読者の皆さん次第です🐔
まとめ: ストーリー暗記、時間はかかるが発展性が高い。
今回のエントリーは丸暗記とストーリー記憶の相違点・共通点を理解してもらうことがゴールでした。
まとめると
- 丸暗記とストーリー記憶も「覚えている」ことには違いがない
- ストーリー記憶では知識の「発展性」を持って覚えることが出来る
- ストーリー記憶には時間がかかる
となるでしょう。
テストまで残された時間が1時間しかない人。
そんな人が試験に受かるための方法は「丸暗記」に頼る外ありません。
でも試験までまだ時間に余裕がある人。
直前に「丸暗記」で済ませるのも良いですが、たまには時間のかかる「ストーリー記憶」を試してみませんか?📚📚
このエントリーで紹介した「いやいや、それは覚えるしかないやろ」という暗記事項は、実は「最小情報原則」に沿っていたりするのです。
最小情報原則って?という方はこちらの記事がおすすめ。
また、Obsidianで作成する1つ1つのノートも「それは覚えるしかないやろ」レベルで作成することを意識すると良いです。これを「Atomic notes 」と表現します。
これらの記事以外にも、このブログでは医学部4年生で直面する「CBT」対策や、Obsidian, Ankiなどデジタル学習に使えるツールを紹介しています。
そちらも一緒に覗いてみて下さい!
これを読んだ貴方の1日が、素敵な時間になりますように…
(☆・ω・)**SeeYou**(・ω・★)ノ
- Densen P. Challenges and opportunities facing medical education. Trans Am Clin Climatol Assoc. 2011;122:48-58, https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3116346/
- Densen P. Challenges and opportunities facing medical education. Trans Am Clin Climatol Assoc. 2011;122:48-58, https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3116346/
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