そのアドバイス、受け取って大丈夫?EBMの思考法「批判的吟味」のすゝめ

日常
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SNSというのは毒にも薬にもなる。

どうも、ジョンです。

SNSを見ていると、いやはや様々なアドバイスが散見されます。

 

例えば「始めは自分でやってみよう。失敗してからが始まり」

とか、

「先ずやってみますじゃなくて一旦真似っ子から始めなよ」とか。

 

「何かを始める時には自分で始めよ or 自分でやる前に他人に聞いてみよ」という、一見相反するアドバイスが同じTLに流れてたりするんですね。

自分が見た世界を参考にして価値判断をするのが人間というもの(←?)なので、同時にそんなアドバイスを見たら、

どっちが正しいんだぁぁぁぁあぁぁ!!!

ってなると思うんですよ。

 

私の場合は、ここから結局何が正しいのか分からなくなってしまい、SNSを見なくする(そもそもの情報Inをゼロにする)という方法を取ろう、といつも考えるんです。

誰かが間違ったことを言っているの?どうやって判断したら良いの?

今日はそんなお話。

この記事を書いた人
じょん

2024年に医学部を卒業、現在大学病院と300床程度の市中病院のたすきがけ研修を行う傍ら、研修生活をより楽しく、パワフルに送る方法を発信しています。
自分自身の体験に基づいた信頼性の高い情報を発信し、研修医・医学生に役立つコンテンツをお届けしています。

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どっちかが間違っている?→ そもそもそのアドバイスは受け入れて良いものか。EBMの視点

 

相反するアドバイスが存在するわけがない‥どっちかが間違えているはず‥くそ‥どっちを信じたらいいんだ‥

ここは1つ、自分が普段専門として勉強している医学さんにお話を聞いてみます。

じょん
じょん

医学さん、医学さんは何かしらの情報を調べる時には何を気をつけているの?

そうだね。医学、特に臨床の現場で用いられている考え方の1つにEBM(Evidence-based medicine)というのがあるんだ。

 

日常的に生じる臨床的問題を解決するために既存の医療情報を参照することが有るのだけど、その時の考え方だね。

 

全部で5つのステップに分けられているよ。

  1. 患者の問題の定式化
  2. 文献情報の収集
  3. 文献の批判的吟味
  4. 患者への適用
  5. 事後評価

おそらく君が悩んでいるのは、これのステップ3「文献の批判的吟味」の部分じゃないかな。

 

Medicmedia 社が出版している「公衆衛生がみえる」には、批判的吟味について、以下の様に述べられています。

批判的吟味の例

情報は信頼できるか?
☑仮説 ☑研究デザイン ☑治療方法 ☑アウトカム ☑対象者
☑バイアス ☑解析方法 ☑結果

実際に適用可能か?
☑自分の患者に当てはまるか?
☑自分の施設で実施可能か?
☑その方法は患者に利益があるか,どのようなリスクがあるか
☑治療費などコストは現実的か

公衆衛生がみえる 2020-2021(32) , MEDICMEDIA より引用

EBMでは批判的吟味の後患者へと適応し、その結果を受けて更に新しい仮説を立てる‥と治療が進んでいきます。

 

例えばさっきの「始めは自分でやってみよう。失敗してからが始まり」と「先ずやってみます、じゃなくて一旦真似っ子から始めなよ」について考えてみましょう。

それぞれのアドバイスの前提条件をまずは抑えます。
ここでは私がそれぞれのアドバイスを聞いた場所を再確認して、前提条件(対象者は誰か)を抜き出す、ということをやってみます。

紹介するアドバイスは全部で3つ。

  • アドバイス1; 「まずやってみる」じゃない。真似しろ
  • アドバイス2; 「言われた通りまずやってみな」
  • アドバイス3; ”Just Do It”

アドバイス1; 「まずやってみる」じゃない。真似しろ

EduGate というITスキル教育事業を運営なさっている「もんぐち社長」のツイート。

アドバイスの対象は誰か?

ツイートの投稿背景までは存じ上げませんが、対象は「既に始めた人」と考えます。

副業界隈(界隈、としてすみません)でしばしば言われているなと思うことは大きく2つ。始めている人向けのアドバイスと、まだ始めていない人向けのアドバイス。それぞれ‥

  • 始めていない人向け:

まず始めてみよう!失敗したら、そこから修正すればいいじゃないか!(DCAP型)

  • 始めている人向け(今回はこっち):

我流でやるな!良い商材はあちこちに転がってる!先ずは成功した人の方法を試して見るんだ!自分の色を付けるのはそれから!

 

アドバイス2; 「言われた通りまずやってみな」

 例えばね、100時間やれって言われて、『あぁ?100時間もやんなくても俺だったら出来るよ』と思うやつと、先ずやってみようと思う人で、成績に大きな差が出るわけですよ。
要はやってみて、100時間が自分に向かないなって言ってチョイスから外すっていうのは理にかなってるんですけど、やっても無いくせにね、時間じゃないよとか、効率だとか、そういうことを言い出すやつは小者中の小者ですわ。

アドバイスの対象は誰か?

動画コンセプト的に言うと、ターゲットは「受験生」でしょう。

100時間をやるかどうかはさておき、大学生である自分にも当てはまるのでは無いかと感じました。

 

 

アドバイス3; ”Just Do It”

最後は、なんかどこかで見たことがあるこの動画。

Just Do It !!!!!

アドバイスの対象は誰か?

Don’t let your dream be dream. Yesterday, you said tomorrow.
SO JUST DO IT!  MAKE YOUR DREAMS COME TRUE!

このアドバイスの対象は、「やろうかなと思っているけどまだはじめてない人」。

 

「相反するアドバイス、どっちが正しいんだ~~」→それ、勘違いかもしれません

さて、ここまで見てみると、どうやら冒頭の

「『何かを始める時には自分で始めよ or 自分でやる前に他人に聞いてみよ』という、一見相反するアドバイス

という私の認識が、間違っていたことに気が付きます。

つまり、相反したアドバイスではなく

 

  • 「あ~~~~やろっかな~~~~やらないでおこっかな~~~~(やらない)」の時間はマジで勿体ないから、始めろ。やるかやらないか迷ったら、GOだ。Just Do It

 

  • いざ始めるとなった時、最初から「自分でやってみよう」とするな。そうじゃなくて、成功した人の方法をまずは真似てみろ。我流でやろうとするな。

 

という、全く別の次元のアドバイスだったのです(1つ目は始める前の話、2つ目は始めた後の話)

 

最も

「我流でやるのではなく他人の方法を真似てみよ」

というマインドを、

「自分からギブすることなく他人から情報を受け取ろうとしてばかり」

と捉え、

「は?テイカーかよ、○ね」
と一蹴してしまうような界隈もあります。(実際にはそんなことは無いのかもしれません。私の解釈違いかも)

「真似てみる」時にはたいてい有料Note とかBrain 等の商材が絡むことが多いですから、それをせずにただ「どうやったら良いんですか?」と聞いてしまう人もいるんじゃないかな、と思います。

「何を選べば、失敗したときに胸を張っていられるか?」のすゝめ

これは少し本題とはズレますが、医療が患者に迫る決断というのは、ときに厳しいものです。医療知識なんてろくすっぽ持ってない一般人が、自分で調べた情報と、先生から話してもらった知識だけで治療方針を決めていかなくてはなりません。

「どの治療方法を選んだら良いんでしょうか??」

と聞かれることもあると思います。

そんなときに、「いやwwww自分で調べろしwww」と足蹴にすることは許されません。

 

『フラジャイル 病理医岸京一郎の所見 』という漫画があります。
その第5巻に、こんなストーリーがありました。

愛する息子がSCID(重症複合型免疫不全症)に罹患しているかもしれないと言われた母。
主治医に対して信頼が置けず、たまたま病理医の岸が担当するセカンドオピニオン外来を受診します。
岸や、その元で働く宮崎は 雑多な検査所見で確定診断を出した主治医に対して違和感をいだきます。
宮崎医師はその違和感を正直に母親へ伝えるも、主治医とセカンドオピニオンの岸・宮崎先生のどちらを信じればよいのか判断が出来ない、と狼狽える母親。

そんな彼女に対し、岸はこう告げます。

もしプロの意見を判断したいなら 自分が医大に入学しましょうか
卒業までに6年、研修で2年 現場で5年もやれば十分でしょう
ざっと13年です。おまけに医師免許がもらえますよ。

でも貴方は今、自分の意思で判断しなくてはならない。
(中略)
状況に流されないでください。主治医の言葉に翻弄されているように見えます。
あなたはまるで息子さんが人質に取られたかのように考えている。

突然そんなことを言われ、戸惑う母親。
「じゃあ、どうすれば私は後悔せずに済みますか?」と岸に問います。

さあ?あなたの問題ですから。

少し言い方を変えてみましょうか?
何を選べば、失敗した時も胸を張っていられますか?

※ この親子の結末は、コミックスを御覧ください。

 

実際には、患者を突き放すような発言はできるだけ避ける、のが定石でしょう。

しかしこちらから情報を最大限提供した後は、患者自身に判断してもらうしか無いのです。

あくまでも「患者 対 医師」という立場でしか、いれないのだから。。

 

「批判的吟味」でアドバイスの取捨選択を。

さて、今回の記事は「EBM」という医学の臨床現場で用いられる思考法を、普段何気なく見ているSNSから得られるアドバイス、それを受け入れるかどうか?という取捨選択に活用しよう、というものでした。

それぞれのアドバイスに対して「アドバイスの対象は誰か?」ということを考えました。

コレ以外にも「自分に当てはめることは可能か?」「その方法は自分に利益があるか?」等と疑問をぶつけることで、大量にあふれる無意識の「アドバイス」を取捨選択することが出来ると考えています。

また、最後には「どんな選択をすれば、自分は後悔しないか?」という、アドバイスの受け入れ方も紹介しました。

医学で学ぶ概念を他の分野に流用することで、世界の見え方って意外と変わるもんなんだな、ということが伝わればなと思います。

 

 

私も

「①気になったことがあったらまずはやってみる→②やってみる時には先人を参考にする」

を取り入れて行こうと思います。

ではまた。

 

 

 

 

 

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